会長
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会長就任のご挨拶
愛媛大学農学部生物環境学科 教授 鑪迫 典久

この度、日本内分泌撹乱物質学会会長を拝命いたしました愛媛大学の鑪迫典久です。これまで副会長として学会運営に携わってまいりましたが、このたび会長という重責を担うこととなり、改めて身の引き締まる思いです。これまで本学会を築き、支えてこられた歴代会長、役員ならびに会員の皆様に深く敬意を表するとともに、皆様のお力をお借りしながら、本学会のさらなる発展に努めてまいります。

内分泌撹乱物質の問題が「環境ホルモン」として社会的に大きな注目を集めてから、四半世紀以上が経過しました。この間、私たちの科学的知見は大きく進歩しました。しかし、研究すべき課題がなくなったわけではありません。むしろ私は、内分泌撹乱研究はいま、新しい段階に入りつつあると感じています。

かつてはエストロゲンやアンドロゲン作用を中心に議論されてきましたが、現在では甲状腺系、ステロイド合成系、代謝系などへと研究対象が広がっています。さらに、発生期曝露、低濃度・長期曝露、複合曝露など、従来の毒性評価の枠組みだけでは十分に捉えにくい問題も重要になっています。

同時に、私たちを取り巻く化学物質の問題そのものも変化しています。PFAS、農薬、医薬品・生活関連化学物質(PPCPs)、プラスチック添加剤、NIAS(非意図的添加物)など、今日注目されているさまざまな物質群の中にも、内分泌系との関係を考えるべきものがあります。また、私たちは一つの化学物質だけに曝露されているわけではありません。作用機序の異なる多数の化学物質への低濃度・複合曝露をどのように評価するのかという問題は、これからの環境科学、毒性学に共通する大きな課題です。

こうして考えると、内分泌撹乱研究は決して過去の研究分野ではありません。むしろ、これまで本学会が蓄積してきた知識や研究手法を、新しい化学物質問題や新しい毒性評価へと展開できる時代になったのではないでしょうか。

海外では、内分泌撹乱作用はすでに化学物質管理における重要な評価項目の一つとなっています。一方、日本では社会的な関心が以前ほど高くないことも事実です。しかし、社会的な注目度と科学的な重要性は必ずしも一致しません。だからこそ今、何が明らかになり、何がまだ分かっていないのかを科学的に整理し、社会に正確に伝える専門家集団の役割が重要になっていると考えています。

私は、本学会をこれまでの「内分泌撹乱物質」という枠組みを大切にしながら、そこからさらに新しい研究領域へとつながっていく学会にしたいと思っています。

そのためには、まず科学的独立性と中立性を大切にしなければなりません。化学物質を必要以上に危険視することも、十分な科学的検証なしに安全と結論づけることも、本学会の役割ではありません。産・官・学の研究者が立場を越えて議論し、科学的エビデンスに基づいて「分かっていること」と「分かっていないこと」を率直に議論できる場でありたいと思います。

そして何より、若い研究者や、これまで内分泌撹乱研究とは少し離れた分野で研究してきた方々にも、「この学会で議論してみたい」と思っていただける学会にしたいと考えています。PFAS、農薬、PPCPs、プラスチック関連化学物質、複合曝露、野生生物影響、ヒト健康影響、さらには新しい試験法や作用機序解析など、研究分野の境界を越えて人が集まれば、これまでとは違った研究の芽が生まれるはずです。

学会大会やシンポジウムも、研究成果を発表するだけの場ではなく、異なる分野の研究者が出会い、「そんな見方があったのか」「一緒に研究できるかもしれない」と思える場にしていきたいと思います。若手研究者の参画、他学会・他分野との連携、行政・産業界との科学的対話、そして社会への情報発信を積極的に進めていきます。

現在、本学会の会員数が減少傾向にあることは、私たちが向き合わなければならない課題です。しかし私は、これを単に学会の縮小として捉えるのではなく、次の世代の研究者を迎え、本学会の研究領域を広げていく契機にしたいと考えています。

「環境ホルモン」という言葉から始まった研究は、この四半世紀の間に大きく発展しました。そして今、その知識を次の時代の化学物質問題へつなげる時期に来ています。

これまでの蓄積を大切にしながら、新しい物質、新しい評価手法、新しい研究分野、そして新しい世代へとつながっていく。本学会を、そのような「次の研究が始まる場所」にしていきたいと思います。

学会は、会長や役員だけで作るものではありません。会員の皆様一人ひとりの研究、議論、そして新しいアイデアが学会の力になります。ぜひ学会活動に積極的にご参加いただき、「こんなことをやってみたい」というご提案もお寄せください。

これまで本学会が築いてきたものを礎として、皆様とともに、日本内分泌撹乱物質学会の次の時代をつくっていきたいと思います。

皆様のご支援、ご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

日本内分泌攪乱物質学会
会長 鑪迫 典久

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